【映画⑪】高地戦
1953年、韓国と北朝鮮が激戦を展開するエロック高地。人民軍の内通者を調査するためにワニ中隊にやって来た韓国軍防諜隊中尉のウンピョ(シン・ハギュン)は、戦友のスヒョク(コ・ス)と再会する。しかし、スヒョクは異例の出世を遂げ、人が変わったように冷酷になっていた。そんなある日、ウンピョは隊員たちと北との内通を示す証拠を目撃し……。
【ここからネタバレ注意!】
個人的に韓国映画は好きでよく観ます。「シュリ」「JSA」「ブラザーフッド」等ハリウッドでは決して描くことのできない朝鮮半島の複雑な政情を扱った作品を容赦なく描くからです。
この作品も他の作品同様、朝鮮戦争の悲惨さと残酷さ、いつ死んでもおかしくない日常を超えたときに到達する、死への恐怖や覚悟すら超えた諦めのような感覚をよく描いていました。
戦場にいる兵士ほど、「国のため」だとか「家族のため」だとか言った謳い文句には飽き飽きしていて、もはや感情で動くことでしかその狂った戦場を生きることができないいのだろうと感じさせられます。
そんな登場人物がたくさん登場しました。
「軍の命令で死ぬのが軍人の運命だ」と言って聞かない司令官
そんな司令官を撃ち殺す味方の兵士
モルヒネで痛覚を麻痺させ戦う大尉
恐ろしくて泣きだす新兵
主人公は唯一理性的でしたが、それでも自分のやっていることの何が正しいのかあいまいになるほど過酷な現実が待っており、もはや感情にまかせることでなんとか生き延びれたのではないかと。
幾多の戦場を生き延び、ベテランになればなるほど感覚が麻痺するか、麻痺させないと到底生きていけないことを理性ではなく本能で認識し動く。そしてそうしないと戦いには勝てないし、仲間を守れないし、死んでいった仲間の戦いが無駄になる。
到底言葉では言い表せない理不尽さ、不条理、異常さのなか必死にもがき戦い生きようとするさまは
お前本気で生きてるか?
といった問いを全力で突き付けられたように感じ、観終わった後はあれこれ考えされられてしまいました。
殺すことでしか生きることが許されない環境で、果たして殺す側に回ることができるのか?
愛する者を守るために地獄へ落ちる覚悟があるか?
そんなことを突き付けられると同時に、おそらく登場人物全員が、戦争が不毛でやるせない行為であることを胸の奥に秘め戦っていたのかと。
戦争映画のため残酷なシーンが多く出てくるので閲覧注意ですが、確実に心に何かを残してくれるそんな作品でした。