飲み会でするような話をしましょう

真面目に不真面目な話します

【映画⑱】 パラサイト 半地下の家族

f:id:nomikai:20210111191603j:plain

仕事も計画性もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続ける息子ギウ。美大を目指すが予備校に通うお金もない娘ギジョン。しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“半地下住宅”で暮らす貧しい4人家族だ。 「僕の代わりに家庭教師をしないか?」ギウはある時、エリート大学生の友人からアルバイトを頼まれる。そして向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった。 パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…。“半地下”で暮らすキム一家と、“高台の豪邸”で暮らすパク一家。相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく--。

 

お父さん役にJSA「シュリ」でおなじみのソンガンホさんが出ており、パルムドール受賞ということで期待して観ました!

少し前に万引き家族を観ていたため、似た感じの作品かな?と思っていましたが、展開は全く異なっていました。

 

【ここからネタバレ注意!】

万引き家族」では経済格差による日本の貧困問題をテーマのひとつとして描いていましたが、「パラサイト」は韓国の格差を取りあげているという点では共通点がありました。

ただ決定的に異なっていたのは結末

この作品は問題解決はされずにあまりいいとは言えない後味の悪さで物語が終わっていきます。

簡潔にストーリーを描きますと半地下貧困家族のソンガンホ一家が大豪邸に住む一家の心を掌握し、もともといた運転手や家政婦を追い出し寄生します。

しかし追い出された家政婦は、実は豪邸の地下の隠し部屋に夫を住まわせており、正体のばれたソンガンホ一家ともめてしまい地下に監禁状態にされてしまいます。

ソンガンホ一家は元の寄生生活に戻ろうとしますが、雇い主の社長たちの本音(貧困者を見下すような発言)を聞いてしまい、だんだん心が揺らいでいきます。

そんなときソンガンホの息子が、自らの計画で始めたことに決着をつけるため元家政婦夫婦を殺害しようと地下に降りますが、元家政婦はすでに亡くなっており、逆にその夫に重傷を負わされてしまいます。

妻を殺された恨みからソンガンホ一家を殺害しようと暴れまわる元家政婦夫はソンガンホ娘を殺害しますが、もみくちゃになったところでソンガンホ妻に逆に刺されて死んでしまいます。

混乱のさなかソンガンホは今までの不満が爆発し、雇い主である社長を殺害して姿を消してしまいます。

そして最終的にはその豪邸の地下に一人また戻っていくのでした・・・。

 

物語最初はメディチックな演出だっただけに後半の急展開には驚きを隠せませんでした。

ソンガンホは直接言われたわけではなかったのですが、聞こえないところで社長が「変なにおいがする」等言っていたことを偶然聞いてしまい、うっぷんがたまったゆえの行動でした。

これが韓国の現状を象徴しているのかと感じました。

韓国映画表現が直接的な作品が多く、結構ショッキングなシーンも平気で映します。

それだけにメッセージ性が強く、印象に残ります。

 

日本と韓国。国は違えど格差は確かにあります。

 

いかに生きてきたか。

いかに生きているか。

いかに生きていくか。

 

つまるところ行き着く境地は、自分の置かれている位置の正しい認識と、その位置にいる状況を作り出した自分自身を正しく認識することと、協力してくれた人への感謝につきるのだと思います。

 

作中でソンガンホがこんなことを言います。

「計画するから失敗する。計画しなければ失敗しない。だから計画はしない。ノープランだ」

このセリフにはいろいろ意味が含まれているのでしょうが、一般的にノープランは歓迎されないと思うのです。

 

ただノープランにもいいところはあります。

それは思わぬ発見に巡り合えること。

 

計画し実行することはただの作業であり、計画通りに進むほど想定内のことしか起こらないため、突発的な楽しみは少ないように思えます。

 

今の世の中何事もプランをたてて正しくやらなければならない。

それはよくわかります。

ノープランで迷惑をこうむるのが自分だけならよいですが、そうではない場合が多いからです。

ですが時には思い付きでやってみたり、とりあえず考える前に動くことで得られるなにかもある。

きっと監督が一番伝えたいことからは少し外れている気もしますが、そんなことも考えさせてくれました。

 

今までの生活方法でした生きていけずこれからもそうするであろうソンガンホ。

今までの生活を脱却し、新しい生き方を模索するその息子。

同じ境遇でありながらも異なる方向へ歩き出す二人が印象的でした。

 

今まで観たことない位様々な要素が盛り込まれた素晴らしい作品でした!