【映画㉖】 ナチス第三の男
ナチスで最も危険な男、ハイドリヒ。彼はなぜ恐ろしい人物へと変貌し、38歳の若さで暗殺されたのか?
2017年フランス、イギリス、ベルギー製作の映画。
「金髪の野獣」と呼ばれナチス親衛隊No.2となったラインハルト・ハイドリヒを描いた映画。
【ここからネタバレ注意!】
ナチスドイツで最も有名な人物はヒトラーですが、その側近にも有名な人物がいるようです。
例えば、
・秘密警察機構、《国家保安本部(RSHA)》のゲシュタポB4課(ユダヤ人問題担当)に所属し、ナチ占領区の1100万人にも及ぶユダヤ人を絶滅収容所に送り込む仕事をしていたアドルフアイヒマン
・そして今回の映画の主役、ヒムラーによって見出され、終戦までの各所の弾圧や恐怖政治、ユダヤ人の大虐殺を実行していた秘密警察機構《国家保安本部(RSHA)》の生みの親ラインハルト・ハイドリヒ
この作品は前半はハイドリヒの半生を描いていますが、後半は彼を暗殺した反政府組織のメンバーたちの最期までを描いています。
主役のハイドリヒですが、いうまでもなく最悪の人物です。
女性スキャンダルで不名誉除隊したところをナチスのヒムラーに見出されて出世し、とにかく勤勉でまじめな性格も拍車をかけ、悪の道を突き進みます。
そんな彼ですが、あえて同情できるとしたら時代背景です。
この時代にドイツで生まれてナチスに従わなければ死かどん底の人生が待っています。
そんな地獄でまともな神経を持っていては到底生きることはできなかったのでしょう。
民族浄化をとことんまで追求し、死ぬ直前まで本気で1000万人近い人間を殺すことをまじめに考えている神経は、あまりに超越しすぎていて
「こいつは生きていちゃいけない・・・・」
と反政府組織のメンバーたちが本気で考えるのもよく理解できました。
後半は暗殺に成功した反政府組織メンバーのドイツ国内への潜入シーンから始まり、協力者との連携、実行、成功後のナチスによる掃討作戦で全滅するまでが描かれています。
最後の掃討作戦への抵抗がとにかく悲惨で、戦う戦士だけでなく、関係者は殺されるか、その前に服毒して自ら命を絶ちます。
作中で作戦に関係し、生き残った人間はほぼおらず、この時代の抵抗運動がいかに命がけだったかひしひしと伝わってきます。
この時代の恐ろしさ、狂気を淡々と描いており、その流れに乗る者と、抵抗する者両方の視点を丁寧に描いており、非常に見ごたえのある素晴らしい作品でした。
この人物について知らない方でも、よく知っている方でも多角的に楽しめる良作であると思います!